2017年11月15日水曜日

法律上履行が不可能な契約の効力(大法院2017年10月12日判決)

 法令で土地分割が制限されている土地を買ったが所有権移転登記がされなかったため支払い済み土地代金の返還を求めたものに対し、裁判所は契約が原始的不能であり無効であるとして不当利得返還請求を認めたものです。
 売買契約の本質は所有権の移転ですが、土地の売買は移転登記をして対抗要件を備えるところまでが契約の主な内容になっていると思われます。そうすると、観念的には所有権を移転することができても移転登記ができないのであれば、契約の一部が債務不履行なのではなく、契約そのものが履行不能であり無効という法的構成になると考えます。
 日本では、契約の原始的不能については今回の民法改正で条文化され、原始的不能であっても契約は無効とならず、債務不履行による損害賠償も可能になりました。代金の支払いを求められたときは契約解除をしていなければ拒否できないのですが、韓国との取引で韓国法が適用される場合は契約解除をしていなくても代金の支払いが拒否できるという違いが生じることになると思います。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 契約当時すでに債務の履行が不可能であった場合、特別な事情がない限り、債権者がその履行を求めることは許されず、すでに履行した給付は法律上原因のない給付となって不当利得の法理に従って返還請求することができ、さらに民法第535条で定める契約締結上の過失責任を請求するなどによって権利を救済されることができる。
 債務の履行が不可能というのは、絶対的、物理的に不可能な場合だけでなく、社会生活上の経験則や取引上の観念に照らしてみたとき債権者が債務者の履行の実現を期待できない場合も含む。これは、債務を履行する行為が法律で禁止され、その行為の実現が法律上不可能な場合も同じである。
 法令にしてがって土地分割に行政官庁の分割許可を受けなければならない土地のうち一部を特定して売買契約が締結されたが、その部分の面積が法令上分割許可が制限される土地分割制限面積に該当して分割が不可能であれば、売主がその部分を分割して所有権移転登記手続を履行することができないので、このような場合にはその旧条例第22条第2項各号の事由に該当するなどの特別な事情がない限り、売主の所有権移転登記義務は履行が不可能といわなければならない。

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