2017年11月16日木曜日

宗教行為と詐欺罪(大法院2017年11月9日判決)

 家族の病気を治すためには祈祷をする必要があるとして1億ウォンの祈祷費を受け取った行為が詐欺罪に該当するとした判例です。
 日本では、祈祷師が効果がないことを知りながら祈祷料を交付させた行為が詐欺罪にあたるとした判例(最高裁1956年11月20日判決)や、宗教的行為の成果が客観的に証明できないからといって勧誘行為が違法であるとはいえないが、相手方の窮迫、軽率などに乗じて不安、恐怖心をあおるなど不相当な方法でなされて相手方の正常な判断が妨げられた状態で著しく過大な献金がなされた場合は不法行為に該当するとした裁判例(神戸地裁1995年7月25日判決)などがありますが、宗教と詐欺の限界を判断するのはなかなか困難なところがあると思います。
 以下は、判決の一部抜粋です。



 被告人が被害者に不幸を告知したり吉凶禍福に関するある結果を約束して祈祷費などの名目で対価を交付された場合に伝統的な慣習または宗教行為として許容されうる限界を超えてたときは詐欺罪に該当する。
 被告人は実際に○○寺敷地内にある屋外ゴルフ練習場で被害者の息子訴外3の名前と生年月日をゴルフボールに書いてゴルフクラブでそのボールを打つことで厄を払う行為をしたと弁解した。しかし、○○寺敷地内にある屋外ゴルフ練習場は被告人と内縁関係にあった訴外4が○○寺敷地内に仏教武術研修院を造成するとしてその体育施設の一部として設置したものであり、宗教儀式のための施設ではなく、被告人は平素は同ゴルフ練習場で訴外4とゴルフを習い練習するなど体育行為としてゴルフをしていた。
 被告人は被害者から金銭を送金されていた当時、内縁関係にあった訴外4と○○寺敷地に各種建物及び施設の設置工事を進めていたので工事費用などの資金が必要な状態であった一方、被告人が金銭を被害者のための祈祷などの費用に支出したことに関する資料はない。
 被害者は被告人から訴外2の病気が霊によるものであり、被告人が祈祷をして霊を追い出して治療することができるという言葉を信じて、それと関連する被告人の言葉と要求に従って被告人に合計1億899万ウォンを送金した。
 被告人の資格および経歴、被告人が金銭を支給された具体的な経緯、被告人が被害者に予告した不幸や約束した内容、被告人が被害者のために実際にした行為の特異性、長期間に被告人が支給された金銭の総額およびその実際の用途、治療不可能な妻の病気によって被害者が直面していた不安な心理状態および貸付を受けなければならなかった被害者の財産状態などに関する事情を上の事実関係および法理に照らしてみると、被告人が被害者に上のような話をし、被害者から長期間にわたって合計1億889万ウォンを送金を受けた行為は伝統的な慣習または宗教行為として許容されうる限界を超えて被告人に詐欺罪が成立するとみるのが妥当である。たとえ被害者が訴外2の病気の治療などのために被告人の祈祷という言葉に依存し、その費用などのために金銭を支払い、これを通して精神的に慰安された事業があったとしても、寧ろこれは被告人が金銭を支給されるために話をした名目に幻惑されたり、欺罔された結果とみることができるので、上の事情だけでは上のような判断の妨害にならない。

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