2017年11月20日月曜日

家庭暴力処罰法の不処分決定と一事不再理(大法院2017年8月23日判決)

 韓国ではDVが発生した場合に家庭裁判所がDV加害者に対して「DV被害者を保護する処分」をすることができ、これによりDV加害者はDV被害者に接近することができなくなります。ここでDV加害者が反省しているとして「保護処分をしない決定」をした場合、DV行為についても刑事処分をすることができなくなるかが問題となりました。
 大法院は「保護処分をしない決定」があったからといってDV行為について刑事処分ができなくなるわけではなく、二重処罰の原則や一事不再理の原則に反するものではないとしました。
 日本でも少年事件の審判不開始決定は既判力がなく一事不再理の効力は認められないとした最高裁昭和40年4月28日判決がありますが、この判決と本件判決に似たような書きっぷりがあり興味深いです。
 以下は、本件判決の一部抜粋です。興味のある方は読んでみてください。

 憲法は第13条第1項で「すべての国民は、同一の犯罪について重ねて処罰されない」と規定して所謂二重処罰禁止の原則ないし一事不再理の原則を宣言している。これは、一度判決が確定すればその後に同一の事件については再び新おあんすることが許されないという原則をいう。ここで「処罰」というのは、原則的に犯罪に対する国家の刑罰権の実行としての加罰を意味するものであり、国家が行う一切の制裁や不利益処分が全てここに含まれるものではない。
 ところで、家庭暴力処罰法に規定される家庭保護事件の調査、審理は検事の関与なく家庭裁判所が職権で進める刑事処罰の特例にとる手続であって、検事は親告罪としての公訴など公訴提起の要件が備わっていない場合でも家庭保護事件として処理することができ(家庭暴力処罰法第9条)、裁判所は保護処分を受けた家庭暴力行為者が保護処分を履行しなかったり、執行に従わなかったりした場合には、職権でまたは請求によってその保護処分を取り消すことができるなど(家庭暴力処分法第46条)当事者主義と対審的構造を前提とする刑事訴訟手続きとはその内容と性質を異なり、刑事訴訟手続きと同じであるといい難いので、家庭暴力処罰法による保護処分の決定または不処分決定に確定した刑事判決に準ずる効力を認めることはできない。
 家庭暴力処分法による保護処分の決定が確定した場合には原則としてその家庭暴力行為者に対して同じ犯罪事実で再び公訴を提起することができないが(家庭暴力処罰法第16条)、その保護処分は確定判決でなく、したがって既判力もないので、保護処分を受けた者は事件と同一の事件について再び公訴提起がされた場合、これについては免訴判決をするのではなく、公訴提起の手続が法律の規定に違背して無効であるときに該当する場合なので刑事訴訟法第327条第2号の規定によって公訴棄却の判決をしなければならない。しかし、家庭暴力処罰法は不処分決定についてはそのような規定を置いていないだけでなく、家庭暴力犯罪について公訴時効に関して不処分決定が確定したときにはその時から公訴時効が進行すると規定しているので(家庭暴力処罰法第17条第1項)、家庭暴力処罰法は不処分決定が確定した家庭暴力犯罪であるとしての一定の場合には公訴が提起できることを前提としている。
 したがって、家庭暴力処罰法第37条第1項第1号の不処分決定が確定した後に検事が同一の犯罪事実について再び公訴を提起したり、裁判所がこれに対して有罪判決を宣告したりしたとしても二重処罰の禁止ないし一事不再理の原則に違背するとはいえない。


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