2017年11月2日木曜日

顧客の口座から勝手にお金を引き出した行為が業務上背任罪にならないとした判決(大法院2017年8月24日)

 銀行の職員が顧客の口座から勝手にお金を引き出した行為について業務上背任罪は成立しないとした判決です。
 預金は銀行など法律が定める金融機関を受入人とする金銭の消費貸借契約であって、その預金口座に入金された金銭の所有権は金融機関に移転し、預金主はその預金口座を通した預金返還債権を取得するので、金融機関の職員は預金主から預金口座を通した適法な預金返還請求があればこれに応じる義務があるだけで、預金主との間にその財産管理に関する事務を処理する者の地位にあるとは言えない。
 しかしながら原審は、被告人がスタンダードチャータード銀行の職員として被害者らから貸付申請を受けたので顧客である被害者らが貸付金を使用できるように被害者ら名義の預金口座に入金された貸付金を任意に引き出さないようにする義務を負っているなどの判示のような理由を挙げて被告人が被害者らの事務を処理する者に該当すると間違って認定し、その前提で原審で選択的に追加された業務上背任の公訴事実を有罪と判断した。したがって、このような原審の判断には業務上背任罪で定める他人の事務及び損害に関する法理を誤り、判決に影響を及ぼす違法がある。

 判決の内容は業務上背任罪ではなく業務上横領罪が成立するといっているだけで、そうだろうなという感じです。ただ、韓国の刑法では背任罪に単純背任罪と業務上背任罪の2つがあるんですが、そもそも業務上でない背任罪ってあるんですかね。
 ついでに、背任罪における損害の発生ですが、韓国では大法院が2003年2月11日判決などで「財産上の損害を加えたときとは、現実的な損害を加えた場合だけでなく、財産上の実害の発生の危険をもたらした場合も含む」といってしまっているので、背任罪が成立しやすくなっているとして経済界から批判があるようです。
 

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