2017年11月24日金曜日

インターネットバンキングで預金解除できることを説明する義務があるか(大法院2017年9月12日判決)

 他人がインターネットバンキングから勝手に預金契約を解除したので、インターネットバンキングで預金契約の解除ができることについて説明されていないとして預金契約の解除は無効であると主張した事件です。
 韓国では約款にかかれていることであっても重要な内容は字を大きく書いたり、アンダーラインを引くなど相手が分かるようにしなければその内容を主張することができないようになっています。一方、日本では今回の民法改正によって定型約款が契約の内容になることが定められましたが、約款の内容をどの程度示したら約款の内容に合意したかどうかまでははっきりしていません。
 本件は、インターネットバンキングで預金契約の解除ができるようになったとしても顧客に不利益がないのだから約款の重要な内容に当たらないとしましたが、最高裁2003年4月8日判例で「銀行において、預金者による暗証番号等の管理に遺漏がないようにさせるために当該機械払の方法により預金の払い戻しが受けられる旨を預金者に明示す」べきと判断されたように、預金契約の解除は金融取引情報の管理に直結する重要な内容であると考えられるのではないかと思います。
 もっとも、本件で原告を保護するためには、預金契約の解除を無効とするだけでなく、債権の準占有者への弁済に過失があったとして弁済を無効としたり、相当額を補償するという方法があるので、預金契約の解除の無効というアクロバティックな結論は出しにくかったのではないかとも思われます。
 なお、日本ではインターネットバンキングの不正利用被害については、法令の規定がないので、全国銀行協会の申し合わせにもとづいて各銀行の判断により補償が行われています。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 約款の規制に関する法律第3条第3項が事業者に対して約款に定めている重要な内容を顧客が理解できるように説明する義務を賦課し、第4項がこれを違反して契約を締結した場合には該当約款の契約の内容と主張できないようにしたのは、顧客をして約款を内容とする契約が成立した場合に各当事者を拘束する内容をあらかじめ知って約款による契約を締結するようにして予測できない不利益を受けないようにすることを防止して顧客を保護しようとすることに立法趣旨がある。
 原審は、第1審判決を引用し、原告と被告銀行の間のインターネットバンキングサービス契約に適用される本件約款が預金契約の解約もインターネットバンキングを通してすることができることに変更し、そのように変更された約款の内容が説明義務の対象になると判断し、これに対する説明義務を履行しなかった被告銀行が原告に上のような変更された約款の内容をインターネットバンキングサービス契約の内容として主張できないと判断した。
 しかし、原審の上のような判断は次のような理由で首肯できない。
 本件変更された約款の規定は被告銀行が顧客に提供する複数のインターネットバンキングサービスの種類に預金解約が追加されたことに過ぎず、これによって原告にある義務が付加されたりこれを知らなかったとして原告が何らかの予測できない不利益を受けるようになるとはいいがたい。したがって、原告がそのような事情を知ったとしてもそれによって被告銀行との間でインターネットバンキングサービス契約をこれ以上維持しないなど他の行動を取ったといえない。
 実際に被告銀行が提供したインターネットバンキングを通した預金解約サービスは本件金融事故に悪用されたものというだけで、本件金融事故の発生や拡大の原因になったと評価しがたい。むしろ、本件金融事故の発生などは原告が自分の金融取引情報を氏名不詳者に知らせたことが直接的な原因になったとみるのが相当である。

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