2017年12月12日火曜日

機械科の教授が大学で化粧品を発明した場合、職務発明になるか(特許法院2017年11月24日判決)

 本件は、忠清大学の機械科の教授が大学で洗顔用ウェットティッシュに関する発明をして特許を取得したのに対し、大学が職務発明であるとして大学に特許権があると主張していたものです。
 第一審の判決を取り消しているので、第一審では職務発明であると認定されたようですが、特許裁判所は業務の範囲に属していないとして職務発明であることを否定しました。
 発明というものは何もないところから突然アイディアがわくものでなく、何かを応用して発明するというのが一般的だと思われますが、この判決では、発明が業務上の何かを応用したかどうかは考慮せず、発明内容と業務との関連性のみを判断しています。
 職場で発明したものは職務をきっかけにしていることが多く、そのようなことを考慮すると職場で発明したものは全て職務発明になってしまうので、発明のきっかけなどは考慮しなかったのではないかと考えます。しかし、そうすると、この教授は業務と関係ないことのために職場の備品を使ったことになるのではないかという点が気になります。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 発明振興法第2条第2号によれば、職務発明とは従業員などがその職務に関して発明したものが性質上使用者などの業務範囲に属し、その発明をするようになった行為が従業員などの現在または過去の職務に属する発明を言い、発明振興法にもとづいて制定された本件職務発明規定第3条第2号でも「職務発明というのは、教職員などがその職務に関して発明したものが産学協力団の業務範囲に属し、その発明をするようになった行為が発明者の現在または過去の職務に属する場合をいう」と規定している。ところで、ここで「その発明をするようになった行為が従業員の現在または過去の業務に属するもの」というのは、従業員が担当する職務内容と責任範囲といえ、発明を図り、これを遂行することが当然に予定されるかまたは期待される場合を意味する。
 上の法理に照らして本件特許発明が被告の現在または過去の職務範囲に属しているかに関して見ると、被告が本件特許発明をする当時の忠清大学の教授として研究業務に従事していたので、被告は一応その職務と関連して発明を図り、これを遂行することが当然に予定されるかまたは規定される場合という余地がある。
 しかし、甲第8号証の記載によれば、被告が本件特許発明を出願した2013年も1学期に被告は「材料域学1」、「設計制度」などの科目を講義していた事実を認定することができ、被告は1991年3月1日に忠清大学機械設計科助教授として認容されて以降2014年9月12日まで忠清大学航空自動車機械学部教授として在籍していた事実、本件特許発明は「洗顔用イージークレンジングティッシュ」に関する発明で使い捨てウェットティッシュとして使用されるスキンティッシュ用のパルプ紙に洗顔液と皮膚コンディショニング剤などを含浸させて洗顔するようにするものを技術的特徴とするものであって、技術分類上、繊維や化学分野、用途上として化粧品分野に属する発明である技術は先に認定したところと同じであり、上の認定事実を総合すれば、被告が教授として遂行する研究または講義業務と関連して被告が機械分野で発明を図り、これを遂行することは当然に予定されるか期待される場合といえるが、被告が繊維や化学または化粧品分野まで発明を図り、これを遂行することが当然に予定されるか期待されるとはいえない。

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