2017年12月7日木曜日

外国のサーバー内にある電子情報を差押えすることができるか(大法院2017年11月29日判決)

 本件は、外国の会社が提供する電子メールサービスを利用してやり取りされたメールの内容を差し押さえたことが適法であるとしたものです。
 日本では、2011年に刑事訴訟法が改正されたときに、第218条第2項で遠隔地にあるサーバから電子情報をパソコン等にダウンロードして差押えができること(リモート差押え)を条文化しました。
 日本の裁判所が発布した令状にもとづいて外国にあるサーバに対してアクセスできるかどうかについては、横浜地裁平成28年3月17日判決において、検証許可状にもとづいてパソコンに送受信メールをダウンロードして保存することは違法であるとしました。また、メールサーバが他国に存在している場合にこれにアクセスすることは、当該他国の主権に対する侵害が問題となりうるとし、捜査機関としては国際捜査共助を要請する方法によることが望ましいとしました。
 しかしながら、国際捜査共助を要請しなければダウンロードできないとすると、サーバが国内にあるのか国外にあるのか判明しない場合、また、国外のどこにあるか判明しない場合は捜査ができなくなってしまいます。差押え令状があればサーバにアクセスする権限があるとして、今回の韓国の判例のように、サーバが国外にあっても差押えることができると解するべきと考えます。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 インターネットサービス利用者は、インターネットサービス提供者と締結したサービス利用契約に従ってそのインターネットサービスを利用して開設した電子メールアドレスと関連サーバーに対してアクセス権限を持ち、該当電子メールアドレスで生成した電子メールなど電子情報に関して作成、修正、閲覧、管理などの処分権限を持ち、電子情報の内容に関して私生活の秘密と自由などの権利保護利益をもつ主体として該当電子情報の所有者ないし所持者といえる。また、インターネットサービス提供者は、サービス利用約款に従って電子情報が貯蔵されたサーバーの維持、管理責任を負担し、該当サーバーのアクセスのために入力されたIDと暗証番号などがインターネットサービス利用者が登録したものと一致すればアクセスしようとする者がインターネットサービス利用者かどうかを確認せずアクセスを許して該当電子情報を情報通信網に連結されているコンピュータなど他の情報処理装置に移転、複製などができるようにすることが一般的である。
 したがって、捜査機関がインターネットサービス利用者である被疑者を相手に被疑者のコンピュータなど情報処理装置内に貯蔵されている電子メールなど電子情報を差押え、捜索することは電子情報の所有者ないし所持者を相手に該当電子情報を差押え、捜索する対物的強制処分として刑事訴訟法の解釈上許される。
 さらに、差押え、捜索する電子情報が差押え、捜索令状に記載された捜索場所にあるコンピュータなど情報処理装置内になく、その情報処理装置と情報通信網に連結されてその第三者が管理する遠隔地のサーバーなど貯蔵媒体に貯蔵されている場合にも、捜査機関が被疑者の電子メールアドレスに対するアクセス権限に代わって発布された令状に従って令状記載の捜索場所にあるコンピュータなど情報処理装置を利用して適法に取得した被疑者の電子メールアドレスのIDと暗証番号を入力するなど被疑者がアクセスする通常的な方法によってその遠隔地の貯蔵媒体にアクセスし、そこに貯蔵されている被疑者の電子メール関連電子情報を捜索場所の情報処理装置にダウンロードしたり、その画面に顕出させたものも被疑者の所有に属したり所持する電子情報を対象になされるものなので、その電子情報に対する差押え、捜索を上野と異なるとする必要がない。
 たとえ捜査機関が上のように遠隔地の貯蔵媒体にアクセスしてその貯蔵された電子情報を捜索場所の情報処理装置にダウンロードしたりその画面に顕出させたとしても、これはインターネットサービス提供者が許容した被疑者の電子情報に対してアクセスおよび処分権限と一般的アクセス手続にもとづいたものとして、特別な事情がない限りインターネットサービス提供者の意思に反するものと断定することはできない。
 また、刑事訴訟法第109条第1項、第114条第1項に令状で捜索できる場所を特定するようにした趣旨と情報通信網に連結されている限り情報処理装置または貯蔵媒体間の移転、複製が容易な電子情報の特性などに照らしてみると、捜索場所にある情報処理装置を利用して情報通信網に連結された遠隔地の貯蔵媒体アクセスすることが上のような刑事訴訟法の規定に違反して差押え、捜索令状で許容した執行の場所的範囲を拡大するものといえない。捜索行為は情報通信網を通して遠隔地の貯蔵媒体で捜索場所にある情報処理装置にダウンロードしたり顕出された電子情報に対して上の情報処理装置を利用してなされ、差押え行為は上の情報処理装置に存在する電子情報を対象にその範囲を定めてこれを出力または複製する方法でなされるので、捜索から差押えに至る一連の過程が全て差押え、捜索令状に記載された場所で行われているからである。
 このような法理は、遠隔地の貯蔵媒体が国外にある場合であるとしても、その事情のみで異なるものではない。

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