2017年12月19日火曜日

下請法にもとづく直接請求の可否(大法院2017年12月5日判決)

 韓国には下請事業者を保護するための「下請取引の公正化に関する法律」という法律があって、親事業者の下請事業者に対する不当要求の禁止や下請代金の支払いの適正化だけでなく、下請事業者が注文者に対して下請代金を直接請求できることが規定されています。
 日本の下請法は「下請代金支払遅延等防止法」が正式名称で、不当要求の禁止や下請代金の支払いの適正化が規定されていますが、下請事業者が注文者に対して代金を直接請求できる規定はありません。特別法に規定がなくても、下請事業者は債権者代位権を使って注文者に代金を直接請求することができますが、下請事業者の保護を考えると特別法で規定しておくことは良いことだと思います。
 本件は、下請事業者が親事業者の注文者に対する代金請求権を差押えたあと、下請法の規定にもとづいて代金の直接請求をした事例です。裁判所は、親事業者の注文者に対する代金請求権が差し押さえられている場合は下請法にもとづく直接請求ができず、それは下請事業者が差し押さえている場合も同じであるとしました。
 下請事業者は債権を差し押さえており、直接請求ができなくても保護されているので、結論としては妥当だと思いますが、この下請業者は裁判をしなければ差し押さえた債権から代金を回収できないという問題は残ります。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 下請取引の公正化に関する法律(以下「下請法」という。)第14条第1項によれば、親事業者の支払停止、破産などにより親事業者が下請代金を支払うことができなくなった場合であって下請事業者が発注者に下請代金の直接支払いを要請するとき(第1号)などの事由が発生した場合、発注者は下請事業者が製造、修理、施工または用役を遂行した部分に相当する下請代金をその下請事業者に直接支払わなければならない。そして同条第2項によれば、上のような事由が発生した場合、親事業者に対する発注者の代金支払い債務と下請事業者に対する親事業者の下請代金の支払債務はその範囲で消滅するものといえる。
 このような下請法の規定の文言によれば、下請事業者が下請契約にもとづく工事を施行し、発注者にその施工した部分に相当する下請代金の直接支給を要請したときに初めて上第1号による下請事業者の発注者に対する直接支給請求権が発生することとあわせて発注者の親事業者に対する代金支払い債務が下請代金の範囲内で消滅するものと解釈しなければならない。
 ところで、下請法に直接支給事由の発生前になされた強制執行または保全執行の効力を排除する規定はないので、下請法第14条による下請代金の直接支給事由が発生する前に親事業者の第3債権者が親事業者の発注者に対する債権に対して差押えまたは仮差押えなどによって債権の執行保全がなされた場合にはそれ以降に発生した下請工事代金の直接支給事由にもかかわらずその執行保全された債権は消滅しない。したがって、このように差押えなどによって執行保全された債権に該当する金額については下請事業者に直接支給請求権が発生しない。
 このような差押えなど執行保全と下請法上の直接支給請求権の関係に関する法理は親事業者の財産を取り巻く債権者らの利害関係の調整の問題を法律関係当事者の地位によって相対的に処理するよりは、これを一律的に簡明に処理することが望ましい点を考慮して認められるものなので、仮差押えまたは差押え命令の当事者間でのみ相対的発生するものとはいえない。また、このような法理は親事業者の発注者に対する債権に関する仮差押えなどが下請事業者の親事業者に対する下請代金債権の実現のためになされる場合にも同様に適用されるといわなければならない。即ち、下請法第14条による下請代金の直接支給事由が発生する前に下請事業者の申請によってのみ親事業者の発注者に対する工事代金債権が仮差押えされた場合などでも、その直接支給事由の発生前にその仮差押えなどによる執行保全の効力が執行解除や執行取消などの事由によって失効されない限り、その執行保全された債権は消滅せず、下請事業者の発注者に対する直接支給請求権も発生しない。

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