2018年2月21日水曜日

飲酒運転の取り締まりで「焼酎でうがいした」という主張が認められるか(議政府地方法院2018年1月17日判決)

 本件は、血中アルコール濃度が0.129%と酔った状態で車を運転したという理由で運転免許を取り消した処分に対し、原告が歯の治療のために民間療法として焼酎うがいをしていたが、飲酒運転取締まりの直前に焼酎うがいをしていたため呼吸測定器に引っかかったと主張して免許取消処分の取消訴訟を提起したものです。
 焼酎うがいは聞いたことがなかったのですが、アルコールで口の中を消毒するための焼酎を口の中に含むという民間療法のようです。焼酎うがいをしたからアルコールが検出されたというのは、言い訳のようにしか聞こえないのですが、その後、病院で採血して血中アルコール濃度を測ったところ0.01%未満となったので、原告の主張が認められました。
 なお、韓国では飲酒運転の基準は血中アルコール濃度によるので呼吸測定に不満がある場合は採血を求めることができるのに対し、日本では血中アルコール濃度だけでなく呼気中アルコール濃度によっても飲酒運転になるという違いがあります。
 以下は、判決の一部抜粋です。

2018年2月13日火曜日

詐害行為取消訴訟が重複した場合の処理(大邱高等法院2018年1月24日判決)

 本件は、債務者から不動産を購入した被告に対し、債権者が詐害行為取消訴訟を提起したものですが、この債権者とは別の債権者が既に同じ不動産の譲渡について詐害行為取消訴訟を提起して確定判決を受けていました。
 日本では、今度の民法改正で詐害行為取消訴訟の判決の効果が他の債権者に及ぶようになりますが、これまでは複数の債権者から詐害行為取消訴訟が提起された場合のルールが明らかになっていませんでした。
 これに対し、韓国では詐害行為取消訴訟の効果は他の債権者に及ぶので、後行の訴訟では先行の訴訟と重なっていない部分のみ認められることになります。本件は、先行の訴訟から土地の価額が増加した場合に、その増加した部分は先行の訴訟とは重なっていないのではないかと問題になりましたが、裁判所は評価額が増加した部分は重なっていない部分に当たらないとしました。
 2つの訴訟が別訴だとすると、不動産の評価額はそれぞれの口頭弁論終結時を基準に評価されるので、後行の訴訟のほうが評価額が高くなれば、増加した部分については先行の訴訟とは重なっていないということができそうです。しかし、取消の対象になっているのは処分行為自体なので、その処分行為の全部について既に取り消されているのであれば、価額の増減は無関係であるということだと思われます。
 以下は、判決の一部です。
 詐害行為取消権の要件を備えた各債権者は固有の権利として債務者の財産処分行為を取り消して、その原状回復を求めることができるものであるが、ある一人の債権者が同一の詐害行為に関して詐害行為取消及び原状回復請求をして勝訴判決を得て、その判決が確定してそれに基づいて財産や価額の回復を終えた場合には、他の債権者の詐害行為取消及び原状回復請求はそれと重複する範囲内で権利保護の利益がなくなるものであり、同一の詐害行為に関して取消訴訟が重複した場合、先行訴訟で確定判決によって処分不動産の鑑定評価による価額返還がなされた以上、後行訴訟で不動産の時価を再び鑑定した結果、上の確定判決で認定した時価より評価額が増加したとしても、その増加した部分を上の確定判決で認定した部分と重複しない部分とみなしてこれについて再び価額賠償を命じることはできない。

 

2018年2月3日土曜日

患者同士のけんかに病院が責任を負うか(釜山地方法院2017年12月12日判決)

 本件は、無断外出して飲酒して戻ってきた患者が、同室の患者に対して「臭い」などと因縁を付けて暴力を振るい死亡させてしまったことに対し、遺族が病院に対して保護義務違反を主張して損害賠償を求めたものです。
 裁判所は、病院には入院患者に対する信義則上の保護義務があるとし、病院が無断外出して飲酒させないようにしなかったこと、最初の暴行時に病室を移動させるなどの措置を取らなかったことなど病院に保護義務違反があるとし、約150万円の損害賠償を認めました。
 日本でも同室の患者による殺人事件について医者の安全配慮義務違反を認めた判決(平成12年10月16日大津地方裁判所判決)がありますが、この事例は加害者に統合失調症による異常行動が予見できていたにもかかわらず適切な措置を取らなかったことを安全配慮義務違反の理由としており、危険回避義務違反の性格が強いので損害賠償請求を認めたと思われます。
 これに対し、本件は病院の保護義務の範囲を広く認め過ぎなのではないかと思われます。病院の保護義務を広く認めることは患者にとっていい面もありますが、病院としては素行の悪い患者を入院させないという判断をすることになり、入院する機会を失う人が出てくることになります。
 以下は、判決の一部抜粋です。