2018年3月5日月曜日

警備員の夜間休憩時間は労働時間に該当するか(大法院2017年12月13日判決)

 本件は、マンションの警備員が夜間の休憩時間も労働時間に該当するとして時間外手当を請求した事件で、高等法院では実際に仕事をした時間は労働時間に該当するがそれ以外の時間は休憩時間としたのにたいし、大法院では実際に仕事をしていなかった時間も待機時間として労働時間に該当するとしたものです。
 判決の基礎となる事実関係や法律関係は全く同じであるにもかかわらず、異なる判決が出るというのは裁判官の差なのか、弁護士の説明の仕方が変わったからなのか分かりませんが、弁護士の訴訟行為とは「いかに裁判官を納得させるか」ということに尽きると思います。同じように司法試験に合格し、司法修習を受けているのですから、弁護士の質はある程度保証されてはいるのですが、やはりどの弁護士に依頼するかによって結果に差が出るということはあると思います。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 労働基準法上の労働時間とは労働者が使用者の指揮、監督下に労働契約上の労働を提供する時間をいう。労働者が作業時間の途中に現実に作業に従事しない待機時間や休息、睡眠時間などであってもそれが休憩時間として労働者に自由な利用が保障されているのではなく、実質的に使用者の指揮、監督下に置かれている時間であれば、労働時間に含まれる。
 原審は、被告が管理所長をとおして警備員らに文書で指示した特別指示(1号)、職員重要熟知事項などに「24時~4時に仮眠状態で急な仕事の発生時に即時に反応(別途就寝時間、場所なし)」と記載されてはいるが、これは原告らが夜間休憩時間中に緊急状況で避けられない労働に着手しなければならない労働形態に起因したものとみなければならず、夜間休憩時間及び食事時間に関した被告の実質的な指揮、監督があったとはいい難いとした。しかし、被告が管理所長をとおして文書で指示した特別指示(1号)、職員重要熟知事項などは警備員らに別途の就寝時間や就寝場所がないという前提で、夜間休憩時間(24時~4時)に勤務哨所(警備室)内の椅子に座って仮眠状態を取りながら急な仕事が発生したときの即時に反応するように指示した点、夜間休憩時間に勤務哨所(警備室)内の照明を付けておくようした点、夜間休憩時間に被告の指示で行われた巡回業務は警備員ごとに毎回定められた時間になされておらず、これによって残りの休憩時間の自由な利用が妨害されていたといえる点などを総合してみると、原告らの夜間休憩時間は自由な時間が保障される休息、睡眠時間とはいい難く、万が一発生するかもしれない緊急状況に備える待機時間とみる余地が十分である。
 また、夜間休憩時間に勤務哨所(警備室)で明かりを消して就寝する警備員らに対して入居者から要求が持続的に提起されていた点、2012年9月3日に作成された警備日誌に「深夜時間:仮眠状態である、哨所の明かりを消して就寝する行為を根絶」と記載されていた点、巡回チームのチーム長を任されていたGは、「24時~4時ごろに巡回をしながら勤務哨所(警備室)に明かりが消えているか、警備員が仮眠をしているかなどを観察して報告した事実がある」と陳述している点、被告は警備員らの勤務評価で入居者らの要求事項のうち指摘事項をその評価事由と考えており、このような警備員らの勤務評価の結果は警備員らの再契約に影響を及ぼしていたものといえる点などを総合してみると、被告が管理所長を通して夜間休憩時間などに関して実質的な指揮、監督としていたといえる余地が大きい。
 原審は、警備員らのうち一部は2014年2月13日ごろ、警備員休憩室が設置される前に勤務哨所(警備室)でない地下室で食事をしたり、休息をtった場合もあったという。しかし、警備員らの一部が使用した地下室は被告の主張によっても防空壕として使用されている空間で、休息を取るのに適当な場所でない点、2012年11月1日に管理所長の主要指示事項に「地下室に不必要な物資の搬入禁止:処理しなければならない一般物資としてベッド、椅子、植木鉢、リサイクル品」を指摘している点、2012年7月2日に管理所長の主要指示事項に、同年6月18日~6月29日に実施した地下室に対する安全点検結果「木の梯子放置、非認可電熱器具、廃品保管放置、ベッド設置、共同テーブル(設置)など」をした管理者に対して罰点処置をした点、2012年7月25日に管理所長の主要指示事項に地下室のベッド利用者に対して勤務紀綱不良を指摘している点などを総合してみると、警備員らのうち一部がFマンションに別途の休憩場所がなく、仕方なく被告の懲戒などを甘んじて地下室で食事をしたり休息を取っていたことをもって、被告が原告らを含めた警備員らに休憩場所を提供していたり、休憩場所の自由な利用を保障していたとはいい難い。
 被告は、2014年2月6日になって初めて警備職員の休憩時間及び休憩場所に関して入居者らに案内文をとおしてこれを告知し、2014年2月8日に「休憩時間」」、「巡回中」と記載されたプレートを制作してからこれを警備室に付けるようにした点、2014年2月13日に警備員休憩室を設置して警備員らに休憩時間中にこれを利用できるようにした点、このような被告の措置以前には入居者らが要求の提起、棟代表会議を通して継続的に警備員らが夜間休憩時間に警備室で明かりを消して寝ている行為などに対する是正を要求していた点などに照らしてみると、被告は2014年2月以前には入居者らに警備員らの休憩時間をちゃんと知らせていないまま警備員らの休憩時間を保障するための特別な努力をしていなかったことが分かる。
 このような事情を先に見た法理に照らしてみると、結局、原告らの休憩時間のうち相当時間は実質的に被告の指揮、監督から離れて自由に休息、睡眠時間の利用が保障されていたといい難い。そうすると、原審としては原告らが被告から勤務哨所(警備室)外に独立した休憩空間を提供されていたか、独立した休憩空間でない勤務哨所(警備室)で休憩時間を過ごしていたことが原告らの自発的な意思によるものか、原告らが休憩時間に被告の指揮、監督を受けずに自由な休息や睡眠を取っていたか、被告が休憩時間に原告らに警備または巡回を指示したり原告らの勤務状況を監視したり報告を受けたことがあるか、被告の休憩時間のうち警備または巡回の指示によって原告らの残りの休憩時間が妨害されたか、このような休憩時間の妨害が避けられない事情によるものかなどに関して十分に審理をしてから、原告らが休憩時間にも被告の実質的な指揮、監督下にあったかどうかを判断しなければならない。
 それにもかかわらず、原審はこのような事情を綿密に検討しないままその判事のような事情だけで、原告らが被告の指示によって夜間休憩時間に巡回業務を遂行したことのみ休憩時間中の超過勤務に該当し、被告は賃金支払い義務があり、残りの休憩時間の場合に原告らが被告の実質的な指揮、監督下の超過勤務をしたといはいえず、被告はこの部分に関して賃金を支払う義務がないと判断した。このような原審の判断は必要な審理を尽くさないまま論理と経験の法則に反して自由心証主義の限界を超えて事実関係を誤認したり労働基準法上の労働時間及び休憩時間に関する法理を誤解して判決に影響を及ぼした違法がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿