2018年3月20日火曜日

性暴力処罰法(カメラ等利用撮影)の適用について(大法院2017年12月28日判決)

 本件は、被害者が自分で撮影した下腹部の写真を被告人に渡したところ、被告人がその写真をSNSにアップしたことが、性暴力処罰法に規定するカメラ等利用撮影に該当するかが争いになりました。
 性暴力処罰法が規定するカメラ等利用撮影は他人の身体を撮影したり、その撮影物を公に展示した場合に処罰することを規定していますが、原審は、他人の身体が撮影された撮影物を展示した場合にも処罰することができると解釈しましたが、大法院は被告人が他人の体を撮影した撮影物を公に展示した場合にのみ処罰するとしか解釈できないとし、被害者が自分の意思で撮影したものを被告人が公に展示した場合は処罰できないとしました。
 日本ではリベンジポルノが問題になったことから2014年に私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ被害防止法)が制定され、性的な写真を不特定多数の者に提供すると処罰されるようになりましたが、撮影対象者が自分で撮った写真であっても第三者が閲覧するつもりでなければ、その写真を不特定多数の者に提供すると処罰されます。本件が日本で発生した事件であれば、リベンジポルノ被害防止法によって処罰されたと考えられます。
 一方、韓国では早い時期から性暴力処罰法を制定して性暴力に対応し、リベンジポルノについても被告人が撮影したものであれば処罰することができます。しかし、リベンジポルノは被害者が自分で撮影した性的写真を渡した後でインターネットなどで公開されてしまうことがよくあるので、これに対応できるように性暴力処罰法の改正が望まれます。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 本件公訴事実のうち予備的控訴事実である性暴力犯罪の処罰等に関する特例法違反(カメラ等利用撮影)の点の要旨は「被告人は2012年初めごろCが自分の下腹部にAというタトゥーを入れ、携帯電話に内蔵されたカメラを利用してこれを撮影してから、被告人に電送したが、上の写真はタトゥー自体の形状のみならず被害者の陰部の一部分も撮影されていたもので、性的羞恥心を誘発しうる身体を撮影した写真であって、被告人は2012年8月26日ごろ、ソーシャルネットワークサービスであるDに上のように被害者から電送されて保管していた写真2枚をアップすることによって、性的羞恥心を誘発しうるCの身体が撮影された写真を公に展示した」というもので、原審判決は上の公訴事実について性暴力犯罪の処罰等に関する特例法(以下「性暴力処罰法」という)第14条第2項、第1項を適用して有罪と判断した。
 性暴力処罰法第14条第2項の撮影物は「他人」を撮影対象者としてその身体を撮影した撮影物を意味するものであることが文言上明白なので、自分の意思によって自ら自分の身体を撮影した撮影物まで上条項所定の撮影物に含ませることは文言の通常的な意味を外れた解釈である。
 本件写真は被告人が他人の身体を撮影した撮影物でないので、上にみた法理により性暴力処罰法第14条第2項および第1項の撮影物に該当せず、従って、上条項によって処罰できない。原審が挙げている大法院2016年10月13日判決は事案を異にするものなので、本件に適用することは適切でない。
 原審判決のうち予備的公訴事実である性暴力処罰法違反(カメラ等利用撮影)の点が破棄されるので、これと一体の関係にある主位的公訴事実である情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(名誉毀損)の点に関する原審判決部分も一緒に破棄されなければならない。

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