2018年3月2日金曜日

区長の違法行為について3億ウォンの求償が認められた事例(プサン高等法院2018年2月1日判決)

 公務員の違法行為によって損害を被ったとしても、その公務員に対して直接、損害賠償請求をすることはできず、その公務員が所属する国や地方公共団体を相手に損害賠償を請求することになります。だからといって、公務員が何の責任も負わないかというとそうではなく、損害賠償をした国や地方公共団体は公務員に対して求償をすることができます。
 もっとも、国や地方公共団体が積極的に公務員に対して求償をすることはほとんどなく、地方公共団体は住民訴訟をきっかけに公務員に対して求償をすることになります。
 その場合でも、支払った損害賠償の全額を公務員に対して求償できるわけではありません。
 本件は、大型スーパーが進出すると地域の中小規模の商店がつぶれてしまうかもしれないことを考慮し、区長が大型スーパーの建築許可申請を返戻し、受理しないことが違法と判断された後も返戻し続けたことに対し、地方公共団体が損害賠償をしたものです。
 第1審は区長の責任を20%と判断しましたが、本件では区長が職員の意見を無視して独断で返戻処分をしたことを重く見て70%の責任があるとし、3億5000万ウォンの賠償義務を認めました。
 地域のためになるようにすることが行政の役割と思ってやったことなのかもしれませんが、行政には権利利益の調整の役割があるので、一つの権利利益だけにこだわると違法と判断されることになります。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 憲法は、行政作用がいつでも法令に根拠を置き、公平に行われるようにすることで行政権を適切に統制し、法治主義の実質的な内容を具現しようとしており、このような法治行政の理念を実現するためには法の支配原則に従って行政権を行使しなければならない。地方公務員法第48条によると、すべての地方公務員は法規を遵守し、誠実のその職務を遂行しなければならない。選出された公務員であっても、これと異ならない。
 行政審判法第49条第1項は「審判請求を認容する裁決は、被請求人とその他の関係行政庁を覊束する」、同条第2項は「裁決によって取り消されたり、無効または不存在と確認された処分が当事者の申請を拒否することを内容とする場合には、その処分をした行政庁は裁決の趣旨に従って再び以前の申請に対する処分をしなければならない」と規定している。
 被告は、第1返戻処分について返戻事由が違法であるという理由で取消裁決が下されているので、取消裁決の趣旨に従って同一内容の処分を反復してはならない義務があるにもかかわらず、これを違反して第1返戻処分と同じ事由で第2返戻処分をした。これに加えて、建築許可履行命令裁決及び期限を定めた是正命令が下されたにもかかわらず、上の是正命令の期限内に建築許可をせず、第2返戻処分と同じ事由で第3返戻処分をした。その過程で原告所属の公務員らが「再返戻時に組合の損害賠償請求訴訟が予想され、設計図書の検討結果、建築法及び関連法令に適法で、関連機関と部署の協議結果も適法で、建築審議の条件事項が反映されているので、建築許可をするのが妥当である」という内容の総合検討意見を繰り返し提示していたにもかかわらず、被告のみの単独的な決定で返戻処分を反復した。
 このような反復された返戻処分の内容とその結果に照らしてみると、被告に法令違反の故意性が濃い。
 地域内の中小企業を保護し、地域経済の均衡的な発展という公益的な目標を達成するための措置という被告の主張は傾聴に値する。しかし、このような公益も法治の枠の中で考慮しなければならないだけでなく、組合の利益や建築許可によって発生する他の肯定的な効果も真摯に客観的に検討しなければならない。被告がこの点に関して真摯に客観的に検討をしたという資料は見られない。
 一方、行政審判法第44条第1項は「委員会は審判請求が理由があると認められる場合でも、これを認容することが公共の福祉に大きく違背すると認められる場合、その審判請求を棄却する裁決をすることができる」とし、事情裁決をすることができるように規定し、行政訴訟法第2錠第1項第1号、第12条によると行政審判に対する裁決について法令上利益がある者はその取り消しを求める行政訴訟を提起することができる。
 乙第1号ないし第12号証の各記載に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。当時、Bら蔚山地域の中小企業らは対策委員会を構成してCの入店に反対した。蔚山地域の自治団体長、市・区議員などを相手に実施したCの入店に関する質問調査で反対が多数と集結され、蔚山北区議会は2010年10月18日に満場一致でCの入店の反対決議案を通過させた。
 しかし、上のような事情は行政審判委員会が第1返戻処分の取消を命ずる裁決や第2返戻処分の取消と建築許可処分の履行を命じる裁決をする過程で既に主張され、検討された要素である。それにもかかわらず、行政審判委員会は事情裁決をしなかった。裁決取消を求める行政訴訟が提起されたこともない。被告の第2、第3返戻処分は行政審判法と行政訴訟法の規定を度外視した故意の違法行為である。被告は違法行為を反復した。
 被告は、原告の政策決定及び執行に関する最高決定権者として業務を統括し、所属職員を指揮、監督する地位にあるので、法令順守義務がより厳重である。原告所属の公務員らが法令を遵守する内容の検討意見を出したにもかかわらず、被告の独断的な決定により本件第2、第3返戻処分を反復した。組合が本件建築許可申請をするのにおいて違法事項があったとはいえない。関連民事訴訟で組合が被った損害の全部について賠償責任が認められた。組合の損害賠償に被告外の他の公務員の寄与を認める余地がない。
 被告が第2、第3返戻処分を通して個人的な財産上の利得を得なかった。公務員が故意の違法な職務執行によって他人に損害を負わせながら個人的な財産上の利得を得てはならないことは至極当然な命題であり、求償責任を制限する比重のある要素にならない。
 行政審判委員会が直接建築許可処分をした後にもDはCを相手に中小企業庁に事業調整を申請し、Cが開店した後にも蔚山中区議会と蔚山北区議会はCの営業中断と事業調整交渉を求める決議案を採択した。また、第2、第3返戻処分とこれによって触発された社会的関心が大型スーパーの進出による地域商圏の崩壊と中小企業の没落などのような問題に対する真摯な法政策的考慮によってなされたと認めることができる。このような事情が被告の違法行為を正当化することはできないが、求償責任を定めるのに斟酌することができる。
 被告の在任期間に大統領の表彰などを受賞したこともある。
 損害の公平な分担という見地から以上の事情を比較考慮してみても被告に故意の反復した不法行為による厳重な責任を問う必要性が明らかに大きい。被告に対する求償範囲を原告が組合に賠償した総金額の70%と定める。

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