2018年3月6日火曜日

執行猶予期間満了後の再審で懲役刑を罰金刑に変更できるか(大法院2018年2月28日判決)

 姦通罪と傷害罪で懲役1年執行猶予2年の実刑判決を受けた被告人が、姦通罪が違憲と判断されたことをきっかけに再審を請求したところ、姦通罪は無罪となり、傷害罪について懲役刑から罰金刑に変更されました。
 ところが、再審の請求をしたときには、すでに執行猶予期間である2年が過ぎていたので、被告人は刑罰を受けなくてもよくなっているのに、再審を請求したことで罰金を払わなければならなくなったことが、二重処罰禁止の原則や不利益変更禁止の原則に反しているのではないかということが問題になりました。
 裁判所は、執行猶予期間が過ぎたことは刑罰を受けたことと同じとはいえないので被告人に懲役刑と罰金刑の二重処罰をしたことにはならない、罰金刑は懲役刑よりも重くないので不利益変更には当たらないとしました。
 確かに理屈としてはそうなのかもしれませんが、既に執行猶予期間が過ぎている被告人にとっては、再審請求をしなければ何も刑罰を受けなくてもよかったのに、再審請求をしたばかりに罰金を払わなければならなくなったという気持ちになると思います。
 例えば、弁護士は禁固以上の刑に処された場合は資格を失うということがありますし、再犯になると罪が重くなるので、懲役刑が罰金刑に変更されるのは有利な変更です。しかし、資格をもっていなければ関係ないですし、普通に生活していたら再犯で起訴されることはないので、罰金に変更されるのは不利益変更だといいたくなると思います。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 併合罪の関係にある数個の犯罪事実を有罪と認定して1個の刑を宣告した不可分の確定判決でそのうち一部の犯罪事実についてのみ再審請求の理由があるものと認められたが、形式的には1個の刑が宣告された判決に対するものとしてその判決全部について再審開始の決定をした場合、再審裁判所は再審事由がない犯罪については新たに量刑をしなければならないので、これを憲法上の二重処罰禁止の原則を違反したものとはいえず、ただ、不利益変更の禁止原則が適用され、原判決の刑より重い刑を宣告することができないだけである。
 原審は、(1)①被告人が2009年1月15日にソウル中央地方法院で姦通罪及び傷害罪で懲役1年執行猶予2年を宣告され、2009年1月23日にその判決(以下「再審対象判決」という)が確定した事実、②その後、被告人は刑法第241条に対する憲法裁判所の違憲決定に従って2015年3月17日に再審対象判決について憲法裁判所法第47条第3項、第4項による再審請求をした事実、③これに第1審は2015年4月16日に再審開始決定をしてから、2015年5月29日に姦通の公訴事実については違憲決定により刑罰法規が効力を喪失したという理由で無罪を宣告し、傷害の公訴事実については罰金400万ウォンを宣告した事実などを認めてから、(2)再審対象判決による執行猶予期間が徒過した本件で再審事由がない傷害の公訴事実について新たに刑を宣告したとしても一事不再理の原則に違反する余地がないという趣旨の判断をした。
 原審判決を理由を記録に照らしてみると、このような原審の判断は先に見た法理に基づいたもので、これに上告理由の主張のように一事不再理の原則及び二重処罰禁止の原則に関する法理を誤解した過ちはない。
 刑事訴訟法は有罪の確定判決や控訴又は上告の棄却判決について、それぞれその宣告を受けた者の利益のために再審を請求することができると規定しているので、被告人に利益となるいわゆる利益再審のみを許容しており(第420条、第421条第1項)、そのような利益再審の原則を反映して第439条で「再審では原判決の刑より重い刑を宣告できない」と規定しているが、これは単純に原判決より重い刑を宣告できないという原則のみを意味しているものではなく、実体的正義を実現するために再審を許容するが被告人の法的安定性を害さない範囲内で再審がなされなければならないという趣旨である。
 ただし、再審審判手続きは原判決の当否を審査する従前訴訟手続きの後続手続ではなく、事件自体を最初から改めて審判する完全に新しい訴訟手続きなので、再審判決が確定すれば原判決は当然に効力を失う。これは、確定した判決に重大な瑕疵がある場合、具体的正義を実現するためにその判決の確定力として維持される法的安定性を後退させ、事件自体を改めて審判する再審の本質から始まるものである。そのため、再審判決が確定されるのに従て、原判決やその付随処分の法律的効果が喪失し、刑の宣告があったという既往の事実自体の効果が消滅することは再審の本質上、当然のことなので、原判決の効力喪失それ自体によって被告人が何らかの不利益を被ったとしても、これをもって再審で保護されなければならない被告人の法的地位を害するものとはいえない。
 したがって、原判決が宣告した執行猶予が失効または取り消されることなく猶予期間が過ぎた後に新たに刑を定めた再審判決が宣告された場合であっても、その猶予期間の経過によって原判決の刑の宣告の効力が喪失されることは、原判決が宣告した執行猶予自体の法律的効果であって、再審判決が確定されれば当然に失効される原判決の本来の効力であるだけなので、これを刑の執行と同じくみることはできず、再審判決の確定によって原判決が効力をなくした結果、その執行猶予の法律的効果までなくなったとしても再審判決の刑が原判決の刑よりも重くなければ、不利益変更禁止の原則や利益再審の原則に反するとはいえない。

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